2019.2.9 国際シンポジウム「国際海洋都市平戸と異文化へのあこがれ―在外資料が変える日本研究」が成功裏に終了

既報の国際シンポジウム「国際海洋都市平戸と異文化へのあこがれ―在外資料が変える日本研究」が、2月9日(土)、長崎県平戸市において開催されました。

2018年度は、人間文化研究機構の基幹研究プロジェクト「日本関連在外資料調査研究・活用事業」が3年目の折り返し地点を迎え、本シンポジウムは、同事業の中間的な成果を研究者や一般に向けて発信する目的で開催されました。平戸は、「ハーグ国立文書館所蔵平戸オランダ商館文書調査研究・活用」プロジェクトとゆかりが深く、本シンポも平戸市と松浦史料博物館、平戸オランダ商館との地域連携により実現したもので、当日は計113名が参加しました。

写真1:シンポ会場となった平戸オランダ商館:17世紀半ばに破壊されましたが、1922年に跡地が国指定史跡となり、2000年の日蘭通商400周年を記念し一部が復元されました。

開会にあたって、岸上伸啓・人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター副センター長、岡山芳治・松浦史料博物館館長のご挨拶に続き、稲賀繁美教授が趣旨説明を行った後、松田清・京都大学名誉教授による基調講演「松浦静山と平戸商館時代」が行われました。

写真2:岸上伸啓理事と岡山館長の開会挨拶

写真3:稲賀繁美教授の開催趣旨説明

写真4:松田清・京都大学名誉教授による基調講演

続く第一部では、ハーグ国立文書館所蔵の平戸関係文書の解読を進めているフレデリック・クレインス・日文研准教授とシンティア・フィアレ・ライデン大学研究員が、オランダ商館初期の知られざる活動実態を報告したほか、前田秀人氏(平戸市文化観光商工部)がオランダ商館の会計帳簿について、福岡万里子・国立歴史民俗博物館准教授が、シーボルト晩年の「日本博物館」構想をめぐる「謎」について、それぞれ報告しました。

写真5:クレインス准教授とフィアレ研究員の発表

第二部では、シルヴィオ・ヴィータ・京都外国語大学教授が、昭和戦前期に大分でキリシタン資料を収集していたイタリア人宣教師マレガ神父の活動を紹介。次いで、朝日祥之・国立国語研究所准教授が、ハワイ出身の帰米二世である比嘉太郎が収集した資料をデジタル人文学の手法で整理した結果を報告するとともに、根川幸男・日文研機関研究員が、平戸出身で、ブラジル日本人移民のパイオニア、山縣勇三郎のかの地での活躍を紹介する発表を行いました。しめくくりの総合討論の部では、投げかけられた質問に対して、他県からはるばる駆けつけた山縣勇三郎の曽孫の方が答えるなどサプライズも飛び出し、大航海時代のオランダ商館を復元した施設内の会場は大いに盛り上がりました。

写真6:シルヴィオ・ヴィータ教授の発表

写真7:熱気を帯びた総合討論の様子

翌2月10日は、平戸市文化観光商工部の前田秀人氏、松浦史料博物館学芸員の久家孝史氏、平戸オランダ商館学芸員の出口洋平氏のご案内で、根獅子の浜や春日集落など、平戸島内の潜伏切支丹遺跡のエクスカーションを行いました。本シンポジウム開催は、平戸市、松浦史料博物館、平戸オランダ商館および地域の皆様のご協力なくしてはありえませんでした。この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。

写真8:平戸潜伏切支丹遺跡エクスカーション:根獅子の浜にてシンポ登壇者ほぼ全員集合